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19.7 食品・材料、選び方、雑知識集

  1. 旨味:かつお節の旨味成分は、イノシン酸シスチジン塩で、熱湯には良く溶ける。昆布の旨味はグルタミン酸で湯によく溶ける。干ししいたけの旨味はグアニル酸。これらの旨味は相乗効果があり、イノシン酸1+グルタミン酸1=7.5、グルタミン酸1+グアニル酸1=30となる
  2. 鮮度の良い刺し身のおいしさは、良い食感と酸味を感じさせない程度の酸の味と言われている。魚の身がだれるとアルカリ度が増して、不味く感じるようになる。食べ物の味を少し酸性にすると美味しくなる。酢が隠し味となる理由の一端である。
  3. 江戸の食材:小松川の小松菜、千住のえんどう・京菜・みつば・しそ・せり・春菊・くわい、練馬の大根、谷中のしょうが、早稲田のみょうが、大井のねぎ、目黒のたけのこ、新宿のとうがらし、府中のまくわうり、上野の蓮根。現在では想像も出来ない。このように産地がある事は、豊かであるという事か。
  4. 米のとぎ汁:例えばたけのこを煮る場合には、糠に含まれる酵素がたけのこの繊維に作用して柔らかくし、えぐみ成分を引き出す事ができる。
  5. :渋柿:愛宕(愛媛)、西条(岡山)、平核無(山形)、会津身不知(福島)、蜂屋(関東)、横手柿(秋田)
    甘柿:富有(岐阜)、次郎(静岡)、松本早生富有(京都)、駿河(中国、四国)、御所、八月御所、甘百目。 好みの富有柿:井上農園、岐阜県糸貫町、058-324-1323
  6. かつお節:重さ約3kg以上の鰹は三枚におろし、更に背側と腹側に切り分ける。それらを、背節(男節、雄節)、腹節(女節、雌節)と呼び、総称して本節と呼ぶ。3kg以下の小さいものは、背と腹に切り分ける事なく、そのまま節にする。形が似ているので亀節と呼ぶ。
    製造段階による区分:
    1. 生利節(なまりぶし):煮熟終了時
    2. 荒節:焙乾終了時(鬼節ともいう)
    3. 枯れ節:2番カビまで
    4. 本枯れ節:3番カビ以上のもので、最上級品
    5. カビを使うと以下の効用がある:カビの生息のための水分が中から表面に吸い上げられるので、中まで硬くなる。この結果、削りやすくなる。カビが作る脂肪分解酵素は、節の脂肪を分解して、脂肪酸化による品質の劣化を防ぐ。タンパク質分解酵素は、節のタンパク質を分解して、旨味の素のアミノ酸を作り、カビが作るイノシン酸は、アミノ酸との相乗効果で、かつお節特有の旨味を醸し出す[41]。
    吸い物には、味のデリケートな亀節、煮物や花がつおには、味と香りの濃厚な本節と使い分ける。[33]
    鰹節は、料理のつど削って使う。
    かつおだしの取り方:水1リットルに80gのかつお節を入れて、火にかける。鍋の中が泡立って、泡がプクリプクリとゆっくり上がり始めたころ(もう一息で沸騰する)、火からおろす。その時、ひとつまみの塩を入れる。これを漉して吸い物だしに用いる。500ccの水を加えて、沸騰させてからもしばらく煮て、煮物用の二番だしをとる。
  7. かぶ:聖護院:大きくて、千枚漬けに使われる、近江:非常に大型、天王寺:球形、米子。色の白いものが良い。
  8. かぼちゃ:背が低く、寸づまりで、色が濃くてつやがあり、固いものがよい。
  9. きゅうり:全体の太さが同じくらいで、素直ですんなりしたもの。プツプツした感じの、薄緑で白い粉がついているものが新しい。あまり青みが濃いものは苦い。板ずり:両端を切り落とし、バットかまな板に塩と少しの水をふり、きゅうりをすりつけるように転がす。塩が緑色になるまで。その後、熱湯にさっとくぐらせて、氷水に2〜3分漬けると色が鮮やかになる。
  10. 黒豆:日本一の黒豆は、昔から徳川将軍家へ献上の品であった丹波古市在の黒豆です。この最上の黒豆の外見は、はなはだ悪く、粒も大きくなく、白いようなしわが幾筋もできており、到底極上品とは見えない。また、二等品に比べて飛び抜けて値が高いので、普通の穀物屋では取り扱わない。第二等品は粒が非常に大きく、皮が黒く滑らかで、光沢もあり、誰が見ても非常に上等の豆と見える。しかしながら、味は一等品よりはズッと劣ります。劣るといっても、この二等品に比肩すべき豆は他の国にはありません[32]。
    黒豆の汁は、咳を止める効果が強い。黒砂糖を混ぜて、一日に幾度も飲むと良い[32]。
  11. ごぼう:
  12. ごま:国産品を使うのが良い。自分で水洗いする。カップ1程度のごまを裏漉し器にとり、手早く水洗いして、けばの無い布にとる。別の布でもみぬぐいしてから、盆ザルの上に広げた布の上にならし、途中で天地返しして乾かす。炒り時間は、厚手鍋でごく弱火で20分程度[35]
  13. 小松菜:良いものは、葉に勢いがあり、厚みがある。色が濃く、柔らかいもの。ポリ袋に入れて冷蔵庫に入れて保存するが、早めに使いきるとよい。
  14. こんにゃく: せっかく作った手綱こんにゃくの形が戻らないようにするには、作ってから何回が引っ張れば良い。
    こんにゃくをやわらかくするには、縦横斜めにすりこぎで叩くとよい(第11.17節)。 こんにゃくの臭みをとるために、水から茹でてから、しばらく冷水に漬ける。 内部に味がしみ込みやすいように、表面に斜めに刻みを入れる(第6.14節)。 表面積を大きくして、味がなじみやすいように、スプーンを使って一口大にちぎる方法がある(第11.17節)。
  15. 西京漬け(魚):魚石新山商店:東京・銀座、03-3541-7728
  16. 里いも:先が丸い里いもがおいしい。細長い里いもは、その部分が堅い事があるので、避けるのがよい。
  17. 塩:料理に良い味が出るのは、岩塩。次は、精製塩。粗塩は風味をそこなう事があるが、漬物その外の塩蔵用にはいい味が出る。
    いり塩:ふり塩を円滑にするために、鍋に粗塩を入れて、いり塩にする。あまり煎り過ぎるとすべりやすくなるので注意する。
  18. 純塩化ナトリウムは非吸湿性である。ところが、塩の中に微量存在する塩化マグネシウムは吸湿性がある。加熱すると、これが酸化マグネシウムになり、吸湿性がなくなり、全体として吸湿性がなくなる。
  19. 塩分と沸点:純水に塩を入れると沸騰点は上昇するが、測定によれば、海水程度の塩分で0.5度程度である。従って、野菜等を茹でる時の塩添加の目的は、色どめと旨味の流出を防ぐためであろう。
    塩の効果[2]:
    1. 防腐作用
    2. たんぱく質の熱凝固を促進する(焼き肉、焼き魚等)
    3. 浸透圧の変化を利用(水分を抽出する)
    4. 褐変を防ぐ(ポリフェノールオキシダーゼの作用を抑える、りんご)
    5. 青みを増す(クロロフィルの退色を防ぐ、青野菜を茹でる時)
    6. 小麦粉のグルテンの形成を促進する(パン、めん類)
    7. ぬめりを除去する(里いも)
    8. 魚肉すりみの弾力性を増す(ねり製品)
    9. 氷に入れて氷点を下げる
    10. ビタミンCの酸化を遅らせる。
    1. 漬物等の塩分濃度は、その日持ちと密接に関連する。
    2. 焼きものが焦げるのを防ぐ。鮎や鯛など、ヒレに塩を塗るのは、立たせるのと焼け落ちるのを防ぐため。
    3. 魚介類の下ごしらえのとき、うま味を逃がさぬように塩水を使う。これは、外側の蛋白質が凝固してうすい膜をつくるため。例えば、あさりを塩水につける(第8.71節)。
    4. 魚類を茹でるとき、熱湯に塩を加えたもので茹でると、身がひきしまり、うまみも失われない。
    5. 魚を煮つける時、立て塩に5〜10分位浸してから煮ると、煮崩れなく、魚と魚がくっつく事もない。
    6. エビやカニは立て塩につけてから茹でると色よくあがる。
    7. 固い豆腐を煮る時、ひとつまみの塩を入れると、軟らかくなり、スもたたない。
    8. 皮をむいたりんごを塩水に通して、褐変を防ぐ。
    9. 青い野菜は、熱湯に塩を少し入れて茹でると、青々とした色にあがる。
    10. 里いもは、塩で揉むとヌメリがとれる。
    11. 他の調味料の味を引き立たせる。酢に塩を入れるとよくきき、砂糖に塩を入れると甘味を引き出す。すいか、夏みかんなど少しの塩をつけると、甘味を引き出す。
    12. 99 年9月20日のNHK8時半からの番組の中で、ゲストの先生が、塩の分子量は砂糖よりも小さいので、ものの中に早く浸透する。従って、しみ込みにくい砂糖を塩よりも先に料理に加えるのであるとコメントされた。それで、長時間煮込むような料理は、同時に入れても差し支えない。ちなみに、塩(Nacl)の分子量は58、砂糖はショ糖とすれば342である。拡散係数で4倍の差がある。
  20. 塩昆布(えびすめ):小倉屋、0120-415214
  21. 塩羊羹:新鶴本店、0266-27-8620、下諏訪町諏訪大社春宮横、幾多あれど、ここがお気に入り。昔ながらの包装を守っている。
  22. 七味唐辛子:唐辛子、胡麻、陳皮、ケシ、山椒、麻仁+(青のり、又は、紫蘇、又は、菜種)の七味。大辛、中辛、小辛の3種類がある。唐辛子の辛味はカプサイシン。これは胃を刺激し、血行をよくする働きがある。
  23. しらすとじゃこ:しらすとは、真いわし、かたくちいわし、こうなご、うなぎ、あゆなどの稚魚の総称だが、売られている大部分はかたくちいわしの稚魚を干したもの。塩ゆでして半乾きにした柔らかいものをしらす干し、堅くなるまで乾燥させたものをちりめんじゃこという。顔立ちが良くて、色白のものが良い。火を通す場合は、ちりめんが適している。冷蔵庫では、しらすは3日、ちりめんは1週間程度がおいしい期間。冷凍保存なら一ヶ月はもつ。
  24. 醤油:
  25. 浸透圧:言葉は難しいが、要するに液体の濃さの目安と考える。ポイントは、濃いものと薄いものが接する場合には、両者の濃さが自然と同じになる性質がある事。例えば、魚を立て塩に漬ける。この場合、水に塩が入っているぶんだけ水が濃くなっているために、魚の中の濃い成分(旨味)が水に流出しにくくなると考える。干ししいたけを戻す場合に砂糖を入れる事がある。これも、水が濃くなっている分だけ、しいたけの旨味が水に流出しにくくなる。煮た豆を膨らませたい時には、最後の工程で、豆の中よりも濃い汁に浸せば、外側の濃い汁が豆の中へ浸透圧により入り込み、豆が膨らむ。これは、黒豆作りの最後の工程で、ミツだけを煮詰めて行っている(第6.1節)。
  26. 酢:米酢は、原料に一定量以上の米を用いた醸造酢で、風味が濃厚でコクがある。主として日本料理に使われる。穀物酢は、米、麦、酒粕、とうもろこしなどの穀物を原料にした醸造酢で、米酢に比べて、旨味・甘味・香りが穏やかで価格も安い。幅広い料理に使われる。
    酢の役目:
    1. 酸味をつける
    2. 旨味を風味を増す
    3. 塩味をまるくする
    4. 香りをつける
    5. 色をきれいにする。れんこんやごぼうを茹でる時は湯量の5%の酢を入れる
    6. 保存性を増す
    7. 色の変化を止める
    8. たんぱく質を固める。ポーチドエッグは湯量の3%の酢を入れる
    9. ゼリー化を助ける
    10. 酸度の調整をする
    11. 大きな油の粒子を小さくする働きにより、油気を減らしてさっぱりさせる。
  27. そば:栄養の比較
    100gに含まれるたんぱく質:そば 9.8g、米 6.8g、小麦粉 8.0g
  28. そばに関係する言葉(ソバの科学 長友 大より)
    夏そば二十日
    夏のそばは犬も食わぬ
    土用三日前にそばを蒔けば二百十日の風に当たらぬ
  29. 午前7時から9時までの間に、その日に開花する90%が開花を完了する。
  30. 大根:青首大根 現在市場に出回るほとんどがこの種類。
    宮重大根:聖護院大根:練馬大根:守口大根:三浦大根:
    選び方:色があくまでも白く、光沢があり、ヒゲ根のついたくぼみの少ないもので、ずっしりと重みがあるものがよい。その品種の標準の中形を選ぶのがコツで、大きいのはスがある事が多く、小さいものは性が素直でない。[33]
    文献による評価:
  31. たけのこ:穂先の葉が黄色く、皮の色が薄い茶か黄色のものがよい。 穂先が緑、下部のイボが大きいものはだめ。
  32. 卵:殻がつるっとしていないで、ざらついているものが新しい。水に漬けてみて、浮き上がるものは腐敗している。新鮮な卵は水の底に横になる。10%の食塩水に入れて、先端が立ち上がる卵は、新鮮ではない[7]。
  33. てんぷらの食べ方:エビやイカのような淡泊なものは、塩で食べるのがうまい。天麩羅屋の塩は、3割くらいの味の素を加えてある場合が多い。野菜類は、大根おろしに塩を加えたものをつけるのが通のやりかただ。てんぷらにお新香はつきもの。てんぷらの間にお新香で油を落とす。お新香とは一夜漬けの事。 アナゴやギンポウのような濃厚なものはてんつゆがうまい。[33]
  34. 厚手の鍋が良い理由:煮物などでは、鍋の中の温度が均一である事が一般的に望ましい。この場合、熱源からの熱の伝わり方が優れている事が必要である。そこで、熱伝導の良い材質(銅、アルミニウム)を使い、更に鍋の厚みを厚くして熱伝導をよくする。天麩羅の場合に、材料を入れた事により、油の温度が急激に下がる事は望ましくない。この場合は二つの方法が考えられる。第一は、大量の油を使って、油自体の熱容量を大きくする。第二は、熱の補給がすばやく出来るようにする。肉厚の厚い鍋は鍋自体の熱容量が高まるし、熱伝導もよくなる。二重構造の鍋は、熱の均一性は良いが、短時間の熱の補給という観点からは適さない。
  35. にんじん:頭の部分に付いている緑色の丸い茎の部分の面積が小さい方が良い。
  36. ねぎ:白い部分に多いアリシンは、リンパ球の活性を高め、免疫力を高める。
    長ねぎ:関東、土寄せをして、白い部分を長くする(〜45cm)。良い品は、青い部分と白い部分が別れている。葉が4枚ついているものが良い。
    千住ねぎ:最高の品質で、一般にはあまり出ない。
    九条ねぎ:京都では、刺激の少ない青い部分が好まれる。そのまま小さく小口切りにして醤油味でご飯にかければ美味い。
    下仁田ねぎ:江戸時代の上流社会で珍重された。糖分が長ねぎの4倍ある。野焼きが最高の食べ方。

    ねぎを切るとその部分の酵素がねぎの甘味を辛味にかえてしまう。そこで細かく切れば切るほど、甘味が減少する。従って、切らずにそのまま焼いたねぎ(例えば野焼き)が一番甘い。その甘味はパイナップルと同程度ある。普通は、辛味により相殺される。
    ねぎを切って1時間ほどおけば、酵素の働きで血液サラサラ効果は10倍にも高まる。
    実験で確かめられているが、ねぎには体温をあげる効果がある。
    保存:乾燥させないように新聞紙でくるみ、暗くて涼しい所へおく。使いかけは、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。
  37. ぶどう:田中ぶどう園、茨城県八郷町、0299-43-0675。無農薬。極上の味。
  38. 干ししいたけ:干ししいたけの旨味が汁になるべく出ないようにするには、ぬるま湯で、砂糖を少し入れて戻す。短時間で戻す事も重要となる。長く浸すと旨味や香りが溶けてしまう。
    花どんこ:寒い時、湿度の少ない乾燥した状態で栽培されたもので、肉厚、かさが白みがかり、菊花状に割れている
    どんこ:かさが七分程度開いているもの
    こうしん:肉薄のかさのもの
    しいたけは乾燥する時に、芳香成分であるレンチオンが、酵素反応のために増えるので、臭いが強くなる。
    しいたけには、ビタミンDの前駆体であるエルゴステリンが豊富に含まれており、日光で乾燥させる時にビタミンDとなる。実験では、血液中のコレステロールを低下させるエリタデニンが含まれている事がわかった。
    原木干ししいたけ「かとうさんちの乾しいたけ」:加藤誠 0974-77-2458を使用している。
  39. 饅頭:山田屋まんじゅう:愛媛県松山市、0120-784818
  40. 富有柿:井上農園:岐阜県糸貫町、058-324-1323
  41. みりん:使うのは少量であるが、味の質を決める事に留意したい。福来純三年熟成本みりん(白扇酒造株式会社)を使用している。
  42. ポン酢:枯木ゆずぽんず:実にピュアな味で美味しい。好み。ぽん酢しょうゆ(馬路村):これも美味しいが、ややだし味が強い印象を受ける。
  43. わさび:わさびの葉つきの部分を鉛筆を削るように切る。表面のイボや黒い部分は包丁でそぎ落とす。たわしで洗い、ナイフで汚れを落とす。おろす時は、切り口を直角にあてて、円を描くようにする。なるべく目の細かいおろし金を使う。これは、酵素の作用が一層活発になり、辛味が増す効用がある。食べる直前におろす事が肝要。保存する時は、底の浅い容器に水を張って入れ、ときどき水を変える。

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Kozan 平成28年2月8日